研究部門

子ども発達研究部門

担当:中井 昭夫

1.研究部門の概要

2.研究の紹介

 子ども発達研究部門では、子どもの発達コホート研究、発達性協調運動障害(DCD)や睡眠など身体性と神経発達障害に関する研究、不登校、いじめなど、子どもの問題に関する研究などを本研究所の他部門や国内外との共同研究として行っています。

①子どもの発達コホート研究

 2004〜2008年度独立行政法人科学技術振興機構社会技術研究開発センター(JST/RISTEX)「脳科学と社会」研究開発領域 計画型研究開発「日本における子供の認知・行動発達に影響を与える要因の解明」(通称:『すくすくコホート』“Japan Children’s Study)を引き継ぎ、2009年から科学研究費助成事業を受け、『武庫川チャイルドスタディ』『すくすくコホート三重』として縦断観察研究を継続しています。このような誕生時からの縦断的研究は我が国においては極めて少なく、今後もさまざまな成果が期待されています。

詳しくは、「子ども発達科学研究センター」HPをご参照ください。

子ども発達科学研究センター
②発達性協調運動障害(DCD)に関する研究

 「不器用・ぶきっちょ」「運動音痴」「どんくさい」などと言われ、悩んでいる子どもやその保護者は少なくありません。一般に、「運動」は「身体」のことと思われがちですが、体格、筋力、関節の柔軟性、心肺機能などを除いて、身体の動きをコントロールしているのは、実は「協調(運動)Coordination」と呼ばれる脳の機能であるという理解が重要です。そして、この「協調」のという脳機能の発達の極端な問題が、発達性協調運動障害 (Developmental Coordination Disorder: DCD)に該当します。さらに、近年の研究では、協調や感覚など「身体性」が神経発達障害の進展に重要な役割を果たしている事が強く示唆されてきています。DCDQやM-ABC2など国際的アセスメントツールの日本語版の開発や神経基盤、ニューロリハビリテーションなどについて、複数の国際・国内共同研究を行っています。中井教授は国際DCD研究学会の日本代表委員に選出され、また日本DCD学会を設立し、その理事を務めるとともに、2017年に第1回の学術集会を大会長として開催しました。

詳しくは、「日本DCD学会」HPをご参照ください。

日本DCD学会
③子どもの睡眠とその問題に関する研究

 睡眠は子どもたちの「脳」と「こころ」と「身体」の発達に非常に重要です。また、発達障害や不登校とも深く関連しています。子どもの睡眠障害について、福井大学、福井工業専門学校、兵庫県立リハビリテーション中央病院「子どものリハビリテーション・睡眠・発達医療センター」などとの共同研究、当事者団体と勉強会などを開催し、当事者研究を行っています。また、子どもの睡眠に関する人材養成プログラムの開発に着手し、2019年度は『子どもの発達を学ぶ会』において試験的に行いました。

文部科学省委託事業「子どもみんなプロジェクト」
(いじめ対策等生徒指導推進事業:脳科学・精神医学・心理学等と学校教育の連携の在り方)

 本研究は、不登校、いじめなど、子どもの問題を、こころの発達の視点から解決する、子どもと先生を支えるものです。子どもの発達と教育についての基礎研究と実践活動を行ってきた10大学(大阪大学・金沢大学・浜松医科大学・千葉大学・福井大学・鳥取大学・弘前大学・兵庫教育大学・武庫川女子大学、中京大学)と自治体の教育委員会からなるプロジェクトです。武庫川女子大学ではその事務局も担当しました。

詳しくは「子どもみんなプロジェクト」HPをご参照ください。

子どもみんなプロジェクト

諸活動

Light It Up Blue MUKOJO! 〜武庫女を青く照らそう!〜

 4月2日は国際連合により「世界自閉症啓発デー」に定められ、また、2日から1週間を「発達障害啓発週間」として、世界170国以上が参加し、世界中のランドマークが青くライトアップされます。日本でも、厚生労働省発達障害情報・支援センター、一般社団法人日本自閉症協会による主催、文部科学省他関係機関の共催により、東京タワー、スカイツリー、通天閣、神戸ポートタワーなど各地で青いライトアップや自閉スペクトラム症(ASD)など発達障害の啓発シンポジウムが開催されています。

 これらの活動にちなみ、学院80周年公募型記念事業に採択され、第1回Light It Up Blue, MUKOJO!を開催しました。4月2日から1週間、MM館前のもみの木と研究所棟を青くライトアップしました。武庫川女子大学が青で世界と繋がった瞬間です。
 また、単なるライトアップ・イベントにとどまらず、発達障害の啓発と地域・社会貢献のため、発達障害に関する市民公開講座を実施しました。発達障害の身体性と当事者研究に関する市民公開講座、ならびにASD当事者の視覚体験ワークショップを実施しました。

第1回市民公開講座 「発達障害の世界を感じてみよう!」
〜発達障害の身体性と当事者研究、ASD当事者の視覚体験ワークショップ〜

日時 2019年4月27日(土)13:00~17:00
場所 中央キャンパス マルチメディア館 1階メディアホール
講演 「発達障害のカラダのこと〜発達障害を身体性から考える〜」
中井 昭夫(本学教育研究所・教授)
「自閉スペクトラム症の視覚世界〜なぜ対人コミュニケーションが難しいのかを考える〜」
長井 志江(東京大学国際高等研究所・特任教授)
ワークショップ ASD視覚体験シミュレータ体験

 市民公開講座には、西宮市、兵庫県内のみならず、大阪府、京都府、滋賀県、さらに奈良県、岡山県からも、また、当事者とそのご家族、教育関係者、支援者など様々な背景、年齢も20歳の本学学生さんから77歳までという幅広い層、約140名の参加がありました。
 本実績は、LIUB JAPANのホームページにも実施機関として登録され、厚生労働省、文部科学省、また、世界的にも認識されているものです。

専門職のための『子どもの発達を学ぶ会』

 西宮市で子どもに関わる専門職に従事している方を対象にした勉強会を月1回程度開催しています。2015年度より、現場と協働しながら、「生態学的発達行動チェックリスト」の開発に取り組んでいます。

保育士・幼稚園教諭・子育て支援者のためのレベルアップ勉強会

 2012年より毎年、保育と子育て支援に携わる保育士を対象にした勉強会を開催してきました。近年のさまざまな保育施設が増加している実情を踏まえ、2019度よりこども園、幼稚園、地域型保育事業所などにも対象を拡大して開催しています。

                          

関連リンク

活動報告

その他の地域・社会貢献

 各種講演会・研修会などにおける講演、メディア出演、出版などを通じて、子どもの発達や睡眠障害に関する啓発活動、地域・社会貢献を「地域・社会教育連携研究部」など他部門と協働しながら積極的に行っています。